合同会社臨床運動障害研究会

レポート21 ¡Feliz año nuevo!

平成26年1月30日

新年、明けましておめでとうございます。

今年は協力隊最終年です。残りの任期も頑張っていきたいと思います。

 

最近、街を歩いているとたまに歩道に車椅子用のスロープを見かけるようになりました。障害者やお年寄りに配慮したイイことだと思います。でもドミニカ共和国では車の運転がかなり乱暴で、道路を横断する時は常に危険が伴います。車両同士が強引な割り込みをするため、車同士が当たったり擦ったりはよくあること。車線以上の車が並走するため、ただでさえ渋滞しているのに、さらに渋滞を引き起こし悪循環となっています。また、車両は右側通行なんですが、目前の信号には関係なく右折は可能となっています。車椅子は運転手の目線からは下の死角に入るため、本当に危険です。上記もあってか、不名誉なことに昨年度ドミニカ共和国の交通事故死亡率が世界でNo.1だったそうです。私の派遣先にも、交通事故が原因による脊損、切断、骨折などの患者がたくさんRHに来ています。思いがけない事故により、多くの人達の人生が変わってしまいます。スロープを増えているところを見ると、「安全」に目を向けてきているのだと思います。しかし、根本である道路交通法や運転手自体の認識を変えていく必要があると思います。

JICAボランティアは、派遣前に派遣先がどういった活動を期待しているのかといった「要望調査票」というものが渡されています。私の要望調査票には、同僚に対しての技術指導や他部署との連携等の記載がありました。私自身も知識・技術共にまだまだ未熟です。今まで勉強して得てきた知識と、派遣後も勉強しながら頑張っていこうと考えていました。

要望調査票を目安にして活動するのですが、実際に現場で働いていると他にも問題点が見えてきます。私が派遣されてまず驚いたのが、術後の関節があまりにも曲がらない・伸びない、また二次障害まで発生しているということでした。何故なのか?その都度、X-P等を見て話を聞いていると、術後・受傷後からRHを始めるまでにかなりの時間が経っていて、すでに拘縮していることが原因でした。そして多くのptが、痛いから安静にして動かしてなかったということでした。「何故もっと早くRHに来なかったのか?」との問いに、「知らなかった」、「Dr.が何も言わなかった」という返答が返ってきました。確かに知識・技術指導といった活動は大切だと思います。しかし、このような状況で○○法のような技術指導だけが必要なのか、もっと根本的なところに問題があるのではないかと思い、「急性期RH普及の必要性」を感じました。

その後、数年前、僕の配属先とは違う施設に配属されていたJOCVが、急性期RHの普及を試みたそうなのですが、あまり上手くいかなかったという話を聞きました。またCPに「ptは何故術後にすぐ来ないのか?」と尋ねたところ、「必要性は解っているけど、私達ではどうしようもない」との返答が返ってきました。

JICAボランティア2年間という限られた時間の中で、以前行ったという活動内容を踏まえて、どのようにアプローチしていくのが効率的なのかを考えました。 まずptに直接伝えるのが1つ。でもRHに来た時にはすでに遅い状況です。であればその手前、opeするDr.や病院に現状と協力を訴え、術前後にDr.からptに早期RHを教えてもらう必要があると思いました。そのためには、Dr.の認識を変えてもらう必要があると思いました。Dr.や病院に話をしていくのに具体的な数字があった方が理解を得やすいと考え、TKAを症例にして、術後からRH開始までの日数、Dr.の指導の有無、術後3か月後の獲得角度、等の統計をとりました。結果、TKA ptの術後からRH開始までの平均日数が約45日、術後にRHを開始するのが遅ければ術後3か月の獲得角度が悪くなる、といった統計がとれました。そしてDr.から自宅での指導が無ければ、極端に獲得角度は悪くなっていました。

このデータをまとめてプレゼンを作り、まず配属先のDirectorとDr.診療部長に現状訴えと広報協力をお願いしました。診療部長は元整形外科医。Dr.は以前から現状を理解していて、横のつながりを使い、現状と早期RHの促しを訴えていたそうです。しかし、ドミニカ共和国では整形Dr.とRH Dr.の仲があまり良くないらしく、思ったように進んでいないとのこと。でも僕の目の前に現実に困っているptがたくさんいるのですから、仲が良い悪いは知ったこっちゃありません。Directorは「解ってはいたけれど、今までは触れてこなかった事。しかし実際に数字で見て必要性が解った」と協力を約束してくれました。 いちセラピスト、ましてや外国人がDr.に対して意見を言っていくのはなかなか大変です。現在、どのように広報していくのか、いろいろと方法を模索しながら活動しています。